6月議会一般質問全文④後見制度への支援
2022.06.16
【質問】
民法上、法定後見制度には成年後見と未成年後見の2種類があります。そのうち成年後見制度は文字通り成人を対象とし、認知症や精神疾患などにより判断能力が不足している方の権利を守るため、家庭裁判所が選任する成年後見人が本人に代わって、財産管理や身上監護のうち法律行為を行うものです。
全国における令和2年末現在の成年後見等の利用者数は229,632人と、全人口の約550人に一人が制度を利用している計算になります。一方本県では、令和3年7月末現在の法定後見制度利用者はわずか1,134人で県人口の約830人に一人、年間の申立件数も極めて少なく、過去5年間で200件に満たなかった都道府県は本県のみと、人口当たりの申立件数でも圧倒的な最下位を独走中です。全国一の高齢県としてはかなり意外な結果だと思いますが、この要因をどのように分析しておられるか、健康福祉部長にお聞きします。
県はこうした状況を受け、平成31年度から成年後見制度利用促進事業を開始し、今年度も研修会の開催などの新規事業を計画していますが、令和3年度の目標とした申立件数228件に対して実績値は172件と、なかなか成果が表れておりません。これまでの取組を見ると、市町村や士業団体など関係者への研修や会議が中心ですが、問題の本質をさらに追及すべきではないでしょうか。まず一般の方にそもそもこの制度が知られていないという現実があります。なぜ、どのような時にこの制度を利用すべきなのか、後見人が選任されるとどのようなことになるのか、理解されない限りは申立てに至るはずがありません。一般市民の皆さんへの周知広報が不足していると感じます。こうした取組は市町村に任せるよりは県のリーダーシップで強力に行う方が効率的だと思いますが、いかがでしょうか。
さらには後見人の成り手不足と費用の問題があります。後見人になるのに特別な資格はなく、親族でも後見人になることはできますが、本人の財産が大きい場合や親族間にトラブルの可能性がある場合などは、家庭裁判所は親族や市民後見人ではなく専門職である司法書士や弁護士などを選任することがほとんどです。後見人の報酬は家庭裁判所が状況に応じて金額を決定しますが、これは本人の財産から支出されるのが原則であるため、資産の少ない方は申立てを躊躇することになります。市町村によっては報酬助成を行う後見制度利用支援制度があるものの、実は厳しい財産要件や首長申立てに限るなどの制限があり、とても行き渡っているとは言えません。現に専門職後見人が就任したものの、本人の財産が少ないために報酬を受領できず、ボランティア状態で業務を行っている事例も少なくないという現実をご存じでしょうか。
判断能力が低下すれば必ず成年後見制度が必要、というわけではありませんが、身寄りのないお年寄りが認知症になってしまった場合、成年後見制度は不可欠と言えます。これからそうした高齢者が増えることは確実である中、一部の専門家の使命感に任せ、その犠牲の上に高齢者の生活を守っていくというのは無理があります。県としてさら主体性をもって、各市町村の成年後見制度利用支援をバックアップしていただきたいと思いますが、健康福祉部長のお考えをお聞かせください。
次に、未成年後見制度についてお聞きします。未成年後見は、未成年者のうち親の死亡や虐待などにより親権を行う者がいない場合に、家庭裁判所が選任する未成年後見人が就任し、本人が成人するまでの間、財産管理や身上監護を行うという制度です。こちらは対象者も成年後見ほど多くはなく、県としても十分な実態把握すらできていないのが現状です。しかし県内にも確実に、親に代わって未成年後見人の監護を受けている子どもは一定数います。日本司法書士会連合会のワーキングチームが平成30年、全国の都道府県に対して行ったアンケートによると、未成年後見人の報酬に対し助成制度を設けていないのは秋田県を含めわずか3県であるとのことでした。未成年後見人は、成年後見と異なって親代わりという側面が強いため、本人の不法行為に対する責任を負うこともあるという点で非常に負担の大きい職務です。にもかかわらず、報酬は前途ある子どもの財産から支出しなければならないため、こちらもやはり報酬を受領できずに就任している専門職後見人が県内にも存在します。秋田の宝であり、しかも何の罪もなく苦境にある子どもたちの福祉について、公的に責任をもって支援する必要があるのではないでしょうか。今後は県としてもっと未成年後見制度についても目を配っていただきたいと思いますが、知事の見解をお聞きします。
【答弁:成年後見関連】(健康福祉部長)
全国的には、制度が浸透していないことや、費用がかかることなどが普及に当たっての課題になっておりますが、特に本県では、家族や親族間の結びつきが強く、自分たちの中で解決しようとする意識が高いことが利用者が少ない最大の要因であると考えております。
成年後見制度の推進には、住民に身近な市町村が制度に関する広報を主体的に行うとともに、地域の実情に応じた相談・支援体制の構築を図っていくことが重要であります。
このため、県では、広域的な支援体制づくりに向けてモデル的に事業を実施したほか、市町村を個別に訪問し、市町村計画の策定や、利用促進の中心的な役割を果たす中核機関の整備を進めるよう働きかけてきたところです。
これらの取組に加えて、今年度は、利用者の意思を支援者が引き出す手法の習得や、日常生活自立支援事業から成年後見制度へ円滑に移行するための研修の実施により、担い手等の資質向上に努めるなど、制度の利用促進に向けた取組を強化してまいります。
【答弁:未成年後見関連】(知事)
未成年後見の対象となる児童は、ひとり親家庭で育ちながら、その親を幼くして失い、同居している祖父母等からの申し立てにより、制度の利用に至るケースが大半と伺っております。
県内では、年に十数人の未成年後見人が選任されており、県が関わる事例としましては、児童相談所長が親権者を亡くした児童の申し立てに関わるケースが数年に1件程度という状況にあります。
大きな困難を抱えた児童の健やかな成長のため、家庭裁判所が選任した専門職後見人への報酬や、児童が起こした事故等の損害賠償保険への加入費用の支援の制度化に向けて検討してまいります。