6月議会一般質問②国民保護計画

2022.06.16
【質問】
 平成16年に成立した国民保護法に基づいて、本県は平成18年「秋田県国民保護計画」を策定し、これまで5回にわたり改定しております。同計画は、着上陸侵攻や弾道ミサイル攻撃といった武力攻撃事態等と、多数の人を殺傷するような大規模テロなどの緊急対処事態の2つの事態を対象としており、県の体制整備や避難、救援などに関する平素からの備えと、いざ武力攻撃事態等が発生した時の初動から避難、救援、具体的には炊き出しや医療、遺体の処理に至るまでが詳細に定められています。
 いま、ウクライナの惨状を目の当たりにするとき、本県の国民保護計画の内容をいま一度点検、周知しておく必要はないでしょうか。同計画の序文は、「住民の皆さんには、この計画の趣旨を理解していただき、自主的に協力をお願いします。」と締めくくられていますが、そもそもこうした計画の存在すら知らない方も多いと思います。いざというときにどのような根拠で誰がどのように動くのか、大まかにでも一度イメージしたことがあるかどうかは、自然災害と同様、有事の際に大きな違いとなります。そして計画の内容についても、平成30年に最後の改定がなされた以降本当に世の中は大きく変わりました。今でもなおこれが実効性のある計画となっているのか、県民の命をまもるために不断のチェックを行うことはきわめて重要だと思います。コロナ禍やウクライナ侵略といった歴史的事象をきっかけにして、あらためて秋田県国民保護計画の周知や点検を行うことについて、知事はいかがお考えでしょうか。
 これに関連して、ハイブリッド戦争と言われる脅威への対処について伺います。ウクライナへの侵略に先立つ2014年、ロシアはクリミア半島へ電撃的に侵攻しました。このときロシアは、戦車や大砲といった軍事的手段のみならず、サイバー攻撃によるインフラ遮断やフェイクニュースの流布などの非軍事的手段を合わせて駆使し、ウクライナ国内を混乱させたうえでクリミア半島を短期間のうちに併合しました。このように現代の戦争は、最初からあからさまな軍事侵攻で始まるというより、有事とも平時とも判別のつかない曖昧な状況から始まることが多く、それゆえ対処も難しくなっています。国民保護計画をみると、着上陸侵攻や弾道ミサイル攻撃といった武力攻撃事態等といったハードな危機を対象としているようですが、近年のトレンドであるハイブリッド戦のようなソフトな危機を想定しているようには思えません。
 県には国民保護計画の他に、自然災害等を対象とした秋田県地域防災計画、感染症を主な対象とする秋田県新型インフルエンザ等対策行動計画、そしてそれら3つの計画の対象以外の多様な危機に対応するための秋田県危機管理計画が定められています。そこで想定されている68区分の危機には「電子情報・情報システムに関する事件・事故」という項目も含まれていますが、先ほど申し上げたような複雑な事態には対応できていないように思えます。日進月歩で進化する現代の様々な脅威に対して無防備な状況なのであれば、対処計画の再検討と改定が必要ではないかと考えますが、知事はどのようにお考えかお聞きします。
【答弁:国民保護計画】(知事)
 県では、武力攻撃事態等への対応について定めた「秋田県国民保護計画」や、弾道ミサイル落下時に住民がとるべき行動等について、これまでも県の防災ポータルサイトや国との共同訓練を通じて周知を図ってきているところであります。
 本来、武力攻撃事態等には、国が主導的に対処すべきものであることから、国民保護措置の内容や、避難方法などの国民がとるべき具体的な行動について理解が進むよう、国の普及啓発の強化を、全国知事会を通じて強く要請しているところであります。
 また、計画が現実に即しているかの点検については、今回のウクライナ情勢のように、地方公共団体の区域を超えた避難が必要な場合もあることから、今年度、国と県が共同で行う訓練では、広域避難における関係機関の役割や手順の確認を重点課題にしております。
 武力攻撃事態等においては、関係機関の対応や避難行動等が自然災害の場合と類似する点もあることから、これらの訓練で得られた経験を含めて市町村や関係機関と知見等を共有し、いざという時に適切な対応がとれるよう、計画の実効性を高めてまいります。
 なお、私も秋田市長時代から関係会議に出席しておりますが、計画の内容が、現在の軍事攻撃時における実態とかけ離れているという感覚を持っており、特に我が国の狭い国土では、住民を安全に避難させる手段が極めて限られ、また、公表すべきでない措置もあることから、県の計画が国の指針に基づいていることを踏まえれば、国としてさらに実態に即して指針を見直す必要があるものと考えます。
【答弁:危機管理計画の改訂等】(知事)
 「秋田県危機管理計画」は、自然災害や武力攻撃、新型インフルエンザ等の感染症以外の危機が県内に発生するおそれがある場合や、それらが実際に発生した場合に、被害・損失を最小限にとどめるための県の体制と基本方針を定めており、具体的な対応については、個々の危機の態様に応じて個別マニュアルを策定しております。
 県に対するサイバー攻撃等に備えるマニュアルでは、事前に技術的対策を講じることにしており、これまでにセキュリティクラウドやファイアウォールなどの機器等の設置を行っているところであります。
 一方、いわゆるハイブリッド戦争では、エネルギー供給や交通の途絶などの事態が全国的かつ複合的に生じ、その影響は社会経済全般に及ぶと考えられ、それらにも備えていくことが重要であると考えております。
 しかしながら、このような安全保障に関わる事態への対応については、国レベルで検討の上、地方公共団体等に示すべきと考えており、様々な機会を捉え、国による取組を働きかけてまいります。
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