一般質問一般質問と答弁の全文⑦休校等基準の明確化

2020.06.27

次に、教育・保育行政について伺います。
3月からの全国一斉休校以来、各教育委員会や各学校、幼稚園、保育所そして学童保育等の関係者は、前代未聞の事態に大変なご苦労をされました。いつどの学校が休校しまたは授業再開するのか、感染状況がどうなれば再開してもよくて、それは誰が決めるのか。部活動やスポ少はどうなるのか。地域ごとに決めたら不公平ではないのか、などなど次から次へと難問が降りかかったのは記憶に新しいところです。一方で事業継続を求められた保育園や学童保育などは逆に、確実な感染予防策の難しい現場でしかも絶対に一人の感染者も出せない、という極めて困難な状況に陥りながらも、経済社会活動のインフラとしての役割を見事に果たされました。いずれも現場の皆さんの使命感あふれる奮闘のおかげであり、心から敬意を表したいと思います。

しかし喉元過ぎた今日、その時直面した課題を早くも忘れかけてはいないでしょうか。第2波は確実に来ると言われている以上、感染状況が少し落ち着いている今こそ、あの時の数多くの難題について議論と検討を加え、次に備えておくべきだと考えます。

私はあの頃の混乱を思い返すにつけても、多くの場面で県としての主導権をもっと発揮しなければならなかったと思っています。例えばある保育の現場では、近傍に勤める子育て世代の方に感染者が出てしまい、その濃厚接触者の子を預かっていましたが、この場合は休園すべきなのか、またはその子どもに登園自粛をお願いするべきなのか、明確な基準がありませんでした。そこで市に相談した結果、結局は判断を園に委ねられたということです。また他の入園児の親からは、感染者と同じ職場であるというだけでその家庭の子どもを登園させないように求められるなど、ある意味ハラスメントともいえる声が上がったそうですが、これも保育園の現況を考えると、わが子を守りたい親としてはまったく理解できない話でもありません。そして医療従事者などの子どもも預かっている以上は簡単に休園や自粛要請もできず、本当に難しい判断とその責任を一施設に背負わせてしまったという現実があります。

「各市町村ごとに事情が異なるから県として一律には決められない。それぞれの特性に応じて決定すべきである」。これは何度も県当局から聞かされた言葉です。ではこの各市町村はどうかというと、「ケースバイケースであり、県としての基準もないので各施設で判断してください」。行政が誰も責任を負わない結果、もっとも末端で、科学的知識も持ち合わせない現場の皆さんに、すべてが押し付けられました。いざと言うときに、秋田の行政は腹をくくらなかったのです。ちなみに人口376万人、昨年の出生数2万5千人あまりの横浜市は、それより早い時期に市として対応の指針を明示し、さらに各園が家庭での保育可能な保護者に対し自粛要請をしやすいよう、市から保護者へ向けた文書を発出しています。これがないと、感染予防のための自粛要請は園の独断ということになり、保護者からの反発にさらされることになるのです。さらに横浜市の文書には、登園自粛を要請しない親の職業要件や、保育料の還付に関することなどきめ細かい事項が記載されていました。出生数わずか4,696人の秋田県がなぜ何も示せないのでしょうか。全県一律の指示が適さないほどの強い個性が、県内各市町村にあるでしょうか。私はやはりこうした事項の判断の主体は、県であるべきだと思います。

今回のような有事において、組織のトップが腹を決めて決定しないと現場に余計な決断コストがかかり、判断を誤ることが逆に増えます。時間をかけきめ細かに検討してミスをなくすという平時の役所モードでは対応できません。こういう難しい時だからこそ、個々の事例の少しの差異はすべて飲み込んだうえで一定の決断を下すべきなのです。具体的には、市町村立も含めた学校の休校や部活動などの休止の判断基準。全県一律でなくとも、県南・県北・県央の区分がいいのか、地域振興局ごとが一番ましなのか、いや受験も近いので今後は公平を期して全県一律にするのか。これは県にしか決められません。また保育についても横浜市等の対応を参考にし、秋田県としての基準を各市町村に示していただきたいと思います。学童保育も第1波では現場に相当な無理をかけました。自粛要請の基準はどうするのか、利用料の返還はどうなるのか、感染者が出た時の判断は。決して放置してまた現場に投げるのではなく、いま検討をしなければなりません。いずれにせよ今のうちに各市町村や現場としっかりと議論し合意を形成しておくことが大事です。県としての大きな指針を定めたうえで細かい裁量を現場に任せておけば、対応もかなりスムーズになるはずです。これについては知事と教育長にそれぞれご答弁をお願いします。

(知事答弁)
市町村立の学校や保育所などの休業等の判断については、それぞれの設置者である市町村等がその権限を有することから、県がそれを越えて休業等を行う場合の基準を設けることは、法体系上、適切ではないものと考えております。
なお、横浜市は、人口規模は大きいものの、市町村立学校等の設置者としての権限について、一部政令市として特有な部分はありますが、基本的には本県における市町村と同列の組織であります。
一方で、広域行政主体としての県は、全県の情報の把握が可能であり、医学的知見も有していることから、今般のような緊急事態においては、児童生徒を保護し、教育機関等を全体として適切に保持するために、県の持つ、いわゆる広域調整権を踏まえ、県教育委員会と連携しながら市町村に対し的確な情報提供をするとともに、休業等について適切なアドバイスに努めてまいります。

(教育長答弁)
次に、休業等に係る判断基準の明確化についてでありますが、県立学校で感染が確認された場合や、関係者が濃厚接触者と判定された場合の考え方は、県教育委員会のウェブサイトで公表しているところであります。
また、市町村教育委員会や、私立学校及び保育所等においても、国が示す取扱等とともに県立学校の考え方を参考とし、それぞれの状況に応じて適切に判断するものと考えております。
なお、本県の教育全般について包括的に進める立場にある県教育委員会としましては、先程の知事答弁にありましたように、保健医療分野を所管する知事部局と連携しながら、市町村教育委員会等に対して全県的な情報を提供するとともに適切に助言してまいります。